Endless Notes
果てしなく広がる美しい自然界
対極にある、果てのない人間界
環境の今を綴る写真家ノート
vol.2 Yakushima island
Endless Notes
果てしなく広がる美しい自然界
対極にある、果てのない人間界
環境の今を綴る写真家ノート
vol.2 Yakushima island
美しい風景の奥にある、地球の「いま」。
気候変動や環境破壊が進む現代、私たちの暮らしと自然との関係は大きな転換点を迎えています。
自然写真家・柏倉陽介氏は、ただの美しさにとどまらず、
地球が抱える課題や変化の兆しを写真に刻み込んできました。
本ページでは、柏倉氏の作品を通して、
自然の多様な表情とその背景にある環境の現状を見つめ直す機会をお届けします。
美しい風景の奥にある、地球の「いま」。
気候変動や環境破壊が進む現代、私たちの暮らしと自然との関係は大きな転換点を迎えています。
自然写真家・柏倉陽介氏は、
ただの美しさにとどまらず、
地球が抱える課題や変化の兆しを写真に刻み込んできました。
本ページでは、柏倉氏の作品を通して、
自然の多様な表情とその背景にある環境の現状を見つめ直す機会をお届けします。
volume.2
Episode of
Yakushima island
volume.2
Episode of Yakushima island


屋久島を語るうえで雨の存在は欠かせません。海からの湿った風が急峻な山岳島に衝突して雲を生み出し、たくさんの雨を降らせて森を潤します。年間を通してすこぶる降る雨はこの島の命を育む源でもあります。


空から降ってきた水が山肌を沿って海に流れ落ちていく。ただそれだけのことで、その狭間にはたくさんの命が生まれます。例外なく、人間もその命の恩恵を受けて生きてこれたのですから、狭間に生きる存在の一つに数えられるでしょう。
とりわけ私の目をひいたのは、森の中にひっそりと立つ巨樹でした。
どれほど生き続けているのか定かではありませんが、
通称「屋久杉」と呼ばれる樹は樹齢1000年以上の杉を指しています。
中には樹齢3000年を超える杉もあると言われています。
紀元前から存在しているという事実を前にしてもあまり実感が湧きません。
時間の感覚が理解の範疇を超えているからです。


とりわけ私の目をひいたのは、森の中にひっそりと立つ巨樹でした。どれほど生き続けているのか定かではありませんが、通称「屋久杉」と呼ばれる樹は樹齢1000年以上の杉を指しています。中には樹齢3000年を超える杉もあると言われています。紀元前から存在しているという事実を前にしてもあまり実感が湧きません。時間の感覚が理解の範疇を超えているからです。


屋久杉はゆっくりと成長するため木目が細かく、樹齢が長い杉ほど木質部に多くの油分が蓄えられます。それゆえに倒れた後でも腐りにくく、樹齢と同じ年月をかけて土に還ると言われます。やがて倒木は苔に覆われ、苔に蓄えられた水分を栄養にして新しい命が芽吹きます。杉の芽だけではなく、さまざまな樹種や菌類など、数え切れない命が倒木を土台にして成長するのです。命に覆われた倒木は生と死の境界線すら曖昧に感じさせます。

永遠に近い時間の狭間に立っていると、過去から未来までの数千年を見渡していることに気づきます。そして、永遠はとても静かなものなのだと理解できるのです。


森の中に立っていると、人もまた同じように生死を繰り返してきたのではないかと思えます。大切な命を次世代につなげるとは少々使い古された表現かもしれません。しかし、この森ではそれがシンプルな答えです。誰もが永遠の狭間に一瞬だけ生きているとするなら、個の存在を繋ぐことこそ生き続ける意味になり得るのかもしれません。
写真家
柏倉陽介 - Kashiwakura Yosuke -

国内外を問わず、自然に関わるテーマを精力的に撮影している。文明と野生の衝突地帯に生きるオランウータンのリハビリテーション風景を中心として、制作に15年をかけた写真集『Back to the Wild 森を失ったオランウータン』を上梓。『オランウータンと緑の津波』と題した巡回展を北海道旭山動物園、えこりん村、円山動物園にて開催した。世界最大の霊長類保護支援団体であるBOS財団が主催する「MOVING PICTURES展」をはじめ、米国立スミソニアン自然史博物館、ロンドン自然史博物館、国連気候変動枠組条約締約国会議にて作品を展示している。LensCulture Earth Awards、ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテスト、ワイルドライフフォトグラファー・オブザイヤーなどに入賞し、Monochrome Photography Awards / ランドスケープ・フォトグラファー・オブザイヤーを受賞。Monochrome Photography Awardsの審査員も務めている。2025年より「Endless」と題した環境撮影プロジェクトを開始した。