Endless Notes
果てしなく広がる美しい自然界
対極にある、果てのない人間界
環境の今を綴る写真家ノート
vol.5 Kathmandu, NEPAL
Endless Notes
果てしなく広がる美しい自然界
対極にある、果てのない人間界
環境の今を綴る写真家ノート
vol.5 Kathmandu, NEPAL
美しい風景の奥にある、地球の「いま」。
気候変動や環境破壊が進む現代、私たちの暮らしと自然との関係は大きな転換点を迎えています。
自然写真家・柏倉陽介氏は、ただの美しさにとどまらず、
地球が抱える課題や変化の兆しを写真に刻み込んできました。
本ページでは、柏倉氏の作品を通して、
自然の多様な表情とその背景にある環境の現状を見つめ直す機会をお届けします。
美しい風景の奥にある、地球の「いま」。
気候変動や環境破壊が進む現代、私たちの暮らしと自然との関係は大きな転換点を迎えています。
自然写真家・柏倉陽介氏は、
ただの美しさにとどまらず、地球が抱える課題や
変化の兆しを写真に刻み込んできました。
本ページでは、柏倉氏の作品を通して、
自然の多様な表情とその背景にある環境の現状を見つめ直す機会をお届けします。
volume.5 Episode of Kathmandu, NEPAL
ネパールと聞けば、エベレストや8000m峰といった山岳地帯を思い浮かべる人が多いだろう。
だが、私にとってのネパールは迷宮そのものだった。
首都カトマンズの心臓部と呼ばれるバザール「アサン地区」には、何百年も続く生活の市場がそのまま残っている。新旧さまざまな建物が密集し、入り組んだ路地を歩けば、まるで迷宮にいるような錯覚に陥る。
不安や恐怖というよりも好奇心による動悸を覚えた。そこに暮らす人々の生活、とりわけ建物の内部に強く惹かれた私は、実際に名も知らぬ人々の部屋を訪ねてみることにした。
ネパールと聞けば、エベレストや8000m峰といった山岳地帯を思い浮かべる人が多いだろう。
だが、私にとってのネパールは迷宮そのものだった。
首都カトマンズの心臓部と呼ばれるバザール「アサン地区」には、何百年も続く生活の市場がそのまま残っている。新旧さまざまな建物が密集し、入り組んだ路地を歩けば、まるで迷宮にいるような錯覚に陥る。
不安や恐怖というよりも好奇心による動悸を覚えた。そこに暮らす人々の生活、とりわけ建物の内部に強く惹かれた私は、実際に名も知らぬ人々の部屋を訪ねてみることにした。







その前に、世界遺産が点在する首都カトマンズについて簡単に触れておきたい。カトマンズはヒマラヤの麓に広がる歴史と信仰の都市で、ダルバール広場やスワヤンブナート、パシュパティナートなどの世界遺産が知られている。ヒンドゥー教と仏教が共存し、スパイスの香る市場にはモモやダルバートといった食文化も根付いている。人々の暮らしと祈りが、日常の中で静かに交差している街がカトマンズなのだ。


そうした歴史あるカトマンズの中でも、アサン地区は特に活気に満ちている。野菜や香辛料、日用品、仏具などが並び、朝から晩まで人の流れが絶えない。

建物は所狭しと密集し、複雑に入り組んだ構造内に無数の店がひしめいている。

一旦、狭い路地に入り込むと東西南北がわからなくなる。

どきどきしながら進んでいくと突然のように空が広がる。

街の中に小さな町があり、その中央に大きな木まで生えている。

そこでは子供たちが走りまわって遊ぶ平和な日常が流れていた。
街の中に小さな町があり、その中央に大きな木まで生えている。
そこでは子供たちが走りまわって遊ぶ平和な日常が流れていた。
建物内部の住居は縦に区切られ、狭い階段で各階がつながっていた。一階が台所、二階が居間、三階が寝室、屋上は洗濯物を干す場所といった具合だ。




建物内部の住居は縦に区切られ、狭い階段で各階がつながっていた。一階が台所、二階が居間、三階が寝室、屋上は洗濯物を干す場所といった具合だ。
訪ねた部屋はいずれも狭いながら丁寧に整えられ、それぞれに個性があった。大胆なイラストが描かれた部屋、モダンで落ち着いた寝室、シンプルすぎるシャワールームなど、自由に見せてもらった。画家の住まいにはアトリエまであり、制作途中の作品が並んでいる。どこの家の屋上も住民共有の干し場となっており、多種多様な洗濯物が風に揺れていた。


訪ねた部屋はいずれも狭いながら丁寧に整えられ、それぞれに個性があった。大胆なイラストが描かれた部屋、モダンで落ち着いた寝室、シンプルすぎるシャワールームなど、自由に見せてもらった。画家の住まいにはアトリエまであり、制作途中の作品が並んでいる。どこの家の屋上も住民共有の干し場となっており、多種多様な洗濯物が風に揺れていた。

印象的だったのは、家族の写真が必ず飾られていたことだ。ネパールでは家族の時間が何よりも大切にされているという。残業で帰宅が遅くなるくらいなら仕事を変える。それほどまでに家族との結びつきは強い。
しかし皮肉にも、ネパールは国外への出稼ぎによって収入を得る人が多い。空港には、海外へ向かう家族を見送る人々であふれていた。危険な仕事も少なくないはずだ。無事に帰ってきてほしいと、外国人である私ですら祈らずにはいられない。

迷宮からの帰り際、建物を見上げると、四角く切り取られた不思議な空が見えた。きっとそれぞれの暮らしの上に、それぞれの見慣れた空が広がっているのだろう。


街では至るところで工事が進められていた。新しい道路をつくるため、古いレンガが次々と剥がされていく。建設途中の建物にはしっかりと鉄筋が組み込まれている。かつての大地震への対策が施されているのかもしれない。

違法に電線を引き込んだ電柱が樹木のように複雑に伸びている光景が印象的だったが、それも最近ではあまり見かけなくなった。開発が進んでいる証なのだろう。写真家としては一抹の寂しさを覚えるが、それもまた時代の流れなのだと感じた。

写真家
柏倉陽介 - Kashiwakura Yosuke -

国内外を問わず、自然に関わるテーマを精力的に撮影している。文明と野生の衝突地帯に生きるオランウータンのリハビリテーション風景を中心として、制作に15年をかけた写真集『Back to the Wild 森を失ったオランウータン』を上梓。『オランウータンと緑の津波』と題した巡回展を北海道旭山動物園、えこりん村、円山動物園にて開催した。世界最大の霊長類保護支援団体であるBOS財団が主催する「MOVING PICTURES展」をはじめ、米国立スミソニアン自然史博物館、ロンドン自然史博物館、国連気候変動枠組条約締約国会議にて作品を展示している。LensCulture Earth Awards、ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテスト、ワイルドライフフォトグラファー・オブザイヤーなどに入賞し、Monochrome Photography Awards / ランドスケープ・フォトグラファー・オブザイヤーを受賞。Monochrome Photography Awardsの審査員も務めている。2025年より「Endless」と題した環境撮影プロジェクトを開始した。






